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旅をして、経験をシェアする。
それは日常を映画のように変えてくれる。
写真家/CINEMA CARAVAN主催志津野 雷さん

写真家として、有名機内誌やセレクトショップ広告撮影を手がけながら、
地元逗子で移動式映画館「CINEMA CARAVAN」を主宰。
多彩な活動の原動力となっているのは、自然の中に身を置き、写真を通して本質を探り、
人とコミュニケーションをはかる旅を続けていることだそう。
そんな志津野さんにとって、旅とは何か、そこから生まれたものとは何かを伺った。

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雷さんにとって、人生を変えた旅を教えてください。
それは本当にたくさんありますね。まず、旅というものが、自分にとって10代20代と、今とで変わっていってるんですよね。
どのように変わっていってるのでしょう。
10年くらい前から、ただ旅をするっていうことではなく、なにかその土地にあるもの、それは良いものも理不尽なものも含めて、彼らにとっても、自分にとっても、どういうヒントがあるんだろう、というテーマで場所を選んで旅をするようになりました。
その中で、印象深い場所はありますか。
例えば、2011年3月10日までいたネパールですね。その時の旅のテーマは、「空と陸の境界線」。人がどこまで住んでいて、その生活は一体どういうものかを知りたくて訪ねました。4000mまでは人が住んでいるんですけど、それ以上は住んでいない。じゃあそこが空との境界線なんだ、と。でも10時間も停電したり、まさに自然と向き合うシンプルな生活。「不便は無いの?」「楽しいの?」って聞くと、ネパールの人は「むしろ下に降りたら何があるの? ここに全てがあるんだけど」みたいな。みんなキラキラしててすごいなって思って。
すごい貴重な体験ですね。
そうなっていくともう、旅をするたびに、人生が変わっていきますね。ネパールで学んだマインドをもっと広く伝えていかなくちゃな、と思ったり。そんな気持ちでネパールから帰ってきた次の日に、3.11があったんです。
なんだか導かれたようなタイミングですね。
そこからスイッチがさらに加速するというか、旅の目的をもっとより深く考えるようになりました。元々、逗子でCINEMA AMIGOを、仲間と7年前に立ち上げた時、長く逗子に住んでいるローカルの人たちや行政と向き合っていきながら、自分たちのスタイル「フリーランスで強くたくましく」っていうのは変えないでいこうという覚悟があって。ゆっくりと時間はかかっても、信用されるようにしていこう、と。そんな自分の拠点は逗子だっていうことがあり、じゃあこの逗子の環境をもっとより良くするためのヒントを旅で探していたんだな、と気づきました。
旅の答えが見えたわけですね。
そんな中で自分には何ができるのかというと、良いも悪いも含めて外を見てくることだなと思いました。逗子とは全く真逆のことをしていたり、同じように見えても何かがちょっと突き抜けてやれているものだったり、そういうものを目的にしながら旅をするようになったんですね。
自分にとっての旅のテーマがより鋭く明確になったと。
そこで出会ったのが「バスク」。もう圧倒的に突き抜けていて「何だここは! すごいぞ!」というアンテナがビンビンきちゃって(笑)。
運命的ですね。バスクと逗子は、似てるんですか。
似てますね。ここならおれ住めるかもって思っちゃったくらい。リズム感とか人の感じとか、環境は波もあってそっくりですね。
バスクの魅力は何でしょうか。
やっぱり紐解いていくと、その人たちが独立してるっていう強さ、なのかな。バスクの歴史は、まさにインディペンデントなんですよね。バスク国っていうオリジナルの国をつくっちゃった。「えっ!? なにそれ、そんなことできるの? すごいな、そんなことやったんだ! バスク」って。
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運命のような、バスクとの出会い
そんな歴史があるんですね。
バスク語というオリジナルの言語もあるんです。もちろんスペインだから挨拶するとき、「オラ!(スペイン語)」って言えば反応はしてくれます。でもそこで「カイショー!(バスク語)」って言えば、もう全然リアクションが違う(笑)。「あら?お前よくわかってるな!」と(笑)もう、これ食えこれ食え、これ乗れこれ乗れ、これ見に来い見に来い、のおもてなしの連続がはじまるんですね。これが自分たちの国をつくった、ゆとりとか愛の強さなんだと。美食の街と呼ばれているので当然どこのお店で食べても美味しいし、でも、美味しいだけじゃなくてバスク人たちの温かみっていうのがもう半端じゃないんですよね。
湧きでる愛で接してくれるんですね。
だから、料理や絵とかバスクの表面的なところだけじゃなくて、彼らの瞳の奥の心の窓を開けちゃった瞬間に、もうすごいグイグイくるんですよね。そんなはじまり方で、5年くらいバスクに毎年通ってました。
そんな歓迎をされたら、そりゃ好きになっちゃいますね。
もうなんか逆に言えばプレッシャーじゃないけど、バスクから愛をもらいすぎちゃったというか(笑)。じゃあ、自分たちの拠点である逗子で、バスクに何かできないかな、と思って。そこで逗子映画祭でバスクデーをはじめました。
そんな経緯があったんですね。
まさにバスクの人たちがそうであるように、逗子の僕たちも、自分たちの街と向き合って、自然と向き合って、自分たちがここでできることをちゃんと自信を持って言おう、やろうと。別に、バスクの人たちも難しいことはしてないし、海と向き合って、山と向き合って、都会でもないけど素敵に生きていける、ということが伝えたくて。逗子映画祭でも有名な俳優さん、監督さんの映画も流すけども、やっぱり自分たちが見てきたものやその背景をちょっとでも伝えたいから、じゃあ、映画みたいに生きてるっていう人に自分はフォーカスしようと思って。そんな映像を上映するんです。
ただ有名な映画を鑑賞するだけ、が目的じゃないと。
それはCINEMA AMIGOのコンセプトも一緒で、映画っていうよりも映画みたいに生きてる人たち、さっきのネパールもそうですけど、日本では見られないけど実際に標高4000mではこういう生活をしているんだよ、っていうのを写真と映像で伝えられること、それが僕にとっても醍醐味ですね。そしてそれこそ僕の役割だと思っています。だから「このためだったら撮りたくなる」っていう意識で、表面的なものっていうよりも内面まで追っかけるのがモチベーションになっています。逗子映画祭では、いろんな国の料理が食べれて、いろんな踊り、いろんな衣装、いろんな写真も見れて、映画みたいな日常を体験できちゃう。でも、それが非日常だと思わないでほしい。日常と非日常は、自分で切り離してるだけで、全部それは日常なんですよってこと。そういう意識で映画祭を楽しめば、じゃあわたしにもできるじゃん、っていう気づきになりますよね。だから、旅も同じで、自分なりのテーマや課題を決めちゃえば、全然見るものや感じるものが変わってきますよね。
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自分が関心を持っているもの。
それを旅のテーマにすればいい。
旅のテーマは、どういう風に決めたらいいでしょうか。
やっぱり自分が関心を持っているものじゃないと、人って動かないじゃないですか。だから関心のあることをテーマにしたらいいと思います。テーマを一個決めちゃえば、旅先はどこでもいい。その意識になるだけで、全然変わる。それは世界中だろうが、日本だろうが、それは地元の住んでいる街ですら。いつもの車じゃなくて、自転車で行ってみる、歩いてみるだけでもなんか新鮮って思えるかもしれません。音楽聴きながらとか、カメラを抱えてとか、スケートボードやってみたりとか。それだけでも全然違うと思いますね。
確かに同じ場所でも感じ方が、すごく変わりそうです。
そういうテーマで、旅を重ねた結果、今度はその経験を、みんなとシェアするのがいいと思う。それでいろんなことがパワーアップしていく。逗子でいえば、例えば両サイドの鎌倉には歴史があり、葉山には高級住宅街の環境があったりします。逗子にしかないものって何? ってなるとすぐ出ないかもしれないけれど、じゃあ、今ここから文化を作っていけばいいんじゃないですかって思っていて。まだ何もないっていうのも立派な強みになるんですよね。
何もない、が強みっていいですね。
逗子映画祭は行政とも一緒に動きながら、僕も旅の経験値をどんどんシェアして、良いものをつくりあげていくっていうスタイルです。旅した結果のゴールがこの拠点となる逗子。そんな旅の経験をどんどん持って帰ってきながら、旅をしていくと、次はこうしたい、人とは違う旅をしたい、旅の結果を出したい、今の場所をもっと良くしたい、とつながっていく。そうすると、おのずと変化がどんどん生まれると思います。
なんか旅がどんどん濃くなって、楽しくなりそうです。 雷さんは、旅行先で出会った人とどうやって仲良くなっていくんですか。
さらけ出すこと。それから夢を裏表なく語ること。そうすると、アンテナが、ガチンとはまる瞬間があるんですよね。もういつも心は、真っ裸です(笑)。僕には写真しか撮れません、でもそれは良いものができます! と。だからあとは、あなたのことを教えてください、っていうスタンスですね。
確かにそうすることで、人や物など様々なものとの新たな出会いが生まれそうですね。
そう、だからみんなにもたくさん教えて欲しいです。どんどん見つけてきてほしいし、こんなところがあったよーって言って、ぜひ僕に教えてほしい。持ってきたのを見て「えー知らなかった! 悔しい!」って思いたい(笑)。旅をして、その経験をシェアすることをみんなに楽しんで欲しいですね。
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志津野 雷 1975年生まれ鎌倉育ち。近年ではANA機内誌「翼の王国」等雑誌、Ron Herman等広告撮影を中心に活動。現代美術作家栗林隆氏のプロジェクト『YATAI TRIP PROJECT』に参加、 フランス騎馬舞台芸術劇団『ZINGARO』のドキュメンタリー撮影や、移動式野外映画館『CINEMA CARAVAN』主宰とその活動は多岐に渡る。 http://raishizuno.jp/
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写真集「ON THE WATER」
青幻舎(2016)4500円+税

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『美食とアートの都』バスクを訪ねる

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スペイン北部に位置するバスク自治州は、フランスとの国境にも接している。
バスク地方の有名な都市は、国際映画祭が行われるサン・セバスティアン、グッゲンハイム美術館のあるビルバオ、ピカソの有名な絵が描かれたゲルニカなど。
美食の街としても知られているバスク地方、スパークワインを片手に、バスク発祥のフィンガーフード「ピンチョス」を堪能。
特にシーフードを生かした料理がおすすめ。
いろいろなバルに立ち寄るのも楽しみの一つである。
サン・セバスチャンやビルバオの周辺には自然に囲まれた小さな街やカラフルでかわいい村が多く、自然豊かな景色が目を魅了する。
サン・セバスティアンにあるコンチャ湾は、美しいビーチが連なっており、夏シーズンともなれば、バケーションを求めて世界中から人々が集まってくる。
沢山の方々が魅了される地、バスク地方。
温かく人情深い人々との出会いをしたい方へ。